アリスとギー兄さんimage
<前左から> 月原 豊 中元未玲 <後左> 伊藤宏美
Angelus'98 実験劇場 No.1の報告
  ・・・・・・・・・・月原 豊
6月20日、東京メンバーと金沢メンバーが芸術村で合流し、実験劇場1「気ちがいお茶会」の稽古は開始された。 今回の舞台では、いくつかの戯曲、小説、詩、論文の「部分」が演じられた。 さらに舞台後方のスクリーンには、「マクベス」「リア王」といったアンゲルスの作品や、ハイナー・ミュラー演出の「ハムレット」、東京演劇アンサンブルの「奇蹟の人」 「銀河鉄道の夜」「かもめ」、そしてクレーの画、またチャウシェスク政権崩壊時のニュースフィルム等が 重なり合うように流された。これらの「部分」は過去の作品の中の俳優たちや、自分たちが影響を受けた人たちのアクチュアリティーに満ちた姿を選びとったものだった。それらの一つ一つ(断片)は怒りや悲しみにあふれ、ある人物は涙を流し、ある人物は泣き叫んでいる。 しかし、そうして傷つきながらも、さらにまだ見ぬ「もう一つの何か」をつかみ取ろうとして魂を輝かせているように見えた。ほんの短い一場面に過ぎないのだが、その短い時間の中で瞬時に燃え上がる人間のエネルギーが鮮明に浮かび上がり、まさにアクチュアルな(いきいきとした)ものとして深く心に突き刺さった。
きちがいお茶会
<左から> 月原 豊 伊藤宏美 坂尻明美 壷本太史 岡田孝志
<スクリーン>「かもめ」根本陽子

そして、その場面どうしがお互いに影響しあうことで「マクベス」や「リア王」の上演時には見えなかった役者の心の表情や"この時代"の中に生きる自分たちの"演劇"というものについて考えるきっかけが浮かびあがったように思う。

 観客の中から「今までもクレーの画はみてきたけれども、こうして芝居と重ねた映像でみると、クレーの画がこんなに鮮烈でエネルギーに満ちているとは気づかなかった。帰って画集をもう一度見てみようと思う。」といった感想をいただいた。 別の方の感想で「カジとギー兄さんの会話が今のわたしと結びついた。きらめきのある一瞬ときらめきのない永遠。自分もきらめくための光を持てばいいのだ・・・・どうやって・・・・。」

 むずかしくてわからないという感想もいくつかあったがほとんどの人たちがこのように自分自身の感覚や日常生活とてらしあわせて何かを感じとってくれたようだ。もちろんこの芝居に取り組んだ自分たち自身が演劇を続けていく上で、きびしい状況ではあるけれども、演劇はアクチュアルなものを造り出す可能性に満ちているんだと実感した。


 今回取り上げた大江健三郎の「大きなる緑の木」の中にこういうセリフがある。 「永遠に近いほど永い時間が問題ではないのじゃないか、そうであるならば・・・自分が深く経験した"一瞬よりはいくらか長く続く間"の光景が大切だ」  この一瞬よりはいくらか長く、しかもはかない、それでいて深く経験したといえるものが、自分たちの演劇活動の中に確かにあるのだ。そして「マクベス」や「リア王」の中にもそれはあったのだと感じることができた。
きちがいお茶会image
<左から> 中元未玲 伊藤宏美 坂尻明美 壷本太史 松尾美智子 月原豊
< スクリー ン>「マクベス」森尾 舞
  きちがいお茶会image
<左から> 月原 豊 岡田 孝志

 

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